2014年度 日本歴史学協会・日本学術会議史学委員会主催
歴史教育シンポジウム
ナショナリズムと歴史教育―ヨーロッパを中心として
日時:2014年10月25日(土)13:30~17:30
場所:駒澤大学駒沢キャンパス 1号館 1―402教場
開会挨拶:木村茂光(日本学術会議会員 史学委員会)
趣旨説明:木畑洋一(日本学術会議連携会員)
報告
富田理恵(東海学院大学)「歴史の岐路に立つ2014年スコットランド独立投票」
1707年1月のスコットランド議会は、110対69でイングランド議会との合同を決定した。主権国家スコットランドを葬った票決に議会外の反発は強かった。1715-16年のジャコバイトの反乱は、合同反対の色合いが濃かったと言われる。約三百年後の2014年、スコットランドはこの票決の妥当性を16歳以上の全有権者に問い直すことになり、武器でなく説得によって戦われるユニークな独立戦争が繰り広げられた。その歴史的意味を考察する。
篠原琢(東京外国語大学) 「境界地域のナショナリズム:中央ヨーロッパの近代」
「中央ヨーロッパ」は、19世紀にその語が生み出された当初から、東西の軸で把握された文明の境界地域として定義されてきた。「民族問題」と名づけられた政治・社会問題も、その枠組みで認識されてきた。中央ヨーロッパを破砕した20世紀の二つの世界戦争は、その境界性をまざまざと見せつけるもののようであった。しかし、「境界性」とは、何に由来するものだろうか。報告では、「境界地域」という認識枠組みの問題点と可能性を考える。
早川和彦(筑波大学付属駒場高校)「国民文学から国民国家を考える」
普仏戦争後のアルザスを描いた小説『最後の授業』。国語教科書の“常連”だったこの小説は、1980年代半ばに一斉に姿を消した。その謎解きからはじまって、国民(国民国家)とは何かを考える授業実践を報告する。母語が国民意識を醸成するというフィヒテ的国民観と、記憶や意志の共有こそが国民意識をつくりあげるというルナン的国民観を理解し、続編にあたる『新しい先生』をパリ市民がどう読んだかを考察した。
総合討論
閉会挨拶:廣瀬良弘(日本歴史学協会)
連絡先:日本歴史学協会 info@nichireki-kyo.sakura.ne.jp