共通テーマ: アフター・コロナのEU再生戦略─グリーンディールの射程
公開シンポ: ポストBrexitのEU世界戦略─対外関係の再構築と加盟国間関係のゆらぎ
実存的危機から完全に脱する間もなく、EUは2020年早々に、新型コロナウィルス感染拡大の猛威に曝されました。EUに感染症対策の十分な権限はなく、自国優先に走る加盟国がなし崩し的に人の移動を停止、ヨーロッパ中の都市のロックダウンがEU経済に激しい打撃を加えました。しかし他方で、この新たな危機は、1兆8243億ユーロにもおよぶ史上最大の多年度予算枠組の採択に帰結しました。そこには「次世代EU」と名づけられた復興予算も組み込まれ、欧州委員会による市中借入まで予定されています。こうしたEU財政の曙光ともいえそうな、アフター・コロナのEU再生戦略の中心に位置づけられているのが、欧州グリーンディールです。2050年までのカーボンニュートラル(気候中立)達成を目指した、エネルギー政策大転換をも含意するその射程は、まさに広大です。EUはこの未曾有の危機にあってなお、世界をリードする新たな経済社会モデルの構築を目指しています。2021年度研究大会初日は、欧州グリーンディールの射程をアフター・コロナのEU再生戦略という観点から考えていきます。
二日目の午後は、今回もまた公開シンポジウムとし、あらためてBrexitの問題をとりあげます。そのプロセスはすでに詳細に跡づけられ、重要な問題が数多く論じられ、学術サイドからも数々の論攷が発表されており、もはや論ずべきことはないようにもみえますが、しかし、ポストBrexitのEU世界戦略については、まだこれからです。トランプからバイデンへと移行するアメリカ外交の修正も予想されるなか、ビッグスリーの一角を失ったEUの世界戦略はどのように再構築されていくのでしょうか。また、イギリスの抜けたEU加盟国間の“国際”政治にはいかなる変化が生じるのでしょうか。安保・通商・開発といった多面的な対外関係の諸相にみられるポストBrexitの変化について、考えていきます。
二日目の午前は例年通り、自由論題の分科会といたします。報告希望者はこのページをご参照ください。企画委員会による厳正な審査により、採否を決定いたします。みなさまのご応募をお待ちしております。